2016年1月11日月曜日

BOOK5おぼえがき

 年々記憶力は弱まるばかりで、忘れることが多くなるばかりである。20号の特集企画のこともあり、今のうちに『BOOK5』について思い出せることを書いておきたい。

◯なぜ作ったか
当初は知り合いふたりと私と3人でつくろうとしていた。その知り合いの方ふたりの対談企画が(個人的には)主眼であったが、それぞれの仕事の都合などありなかなかすすまず、そのうちトマソン社をはじめることになり、その際にひとりで作らせてほしいとふたりにお願いして創刊号の制作をすすめた。

◯誌名について
「BOOK5」は、その知り合いの方うちのひとりの命名(これもお願いして使わせていただいた)。3人での企画会議で、ラジオのような誌面を、という話になって出てきたもの。 つまりNACK5のもじりである。

◯なぜ「本」を題材としたのか
本関係の雑誌で、じぶんの知りたいようなことを取り上げているものが、当時の目線の先には見当たらなかったため。また、小部数流通冊子のネット小売であるトマソン社のPR誌的な側面を持たせたいと考えた。しかし、結果的にはPRにはあまりならず、むしろ「雑誌を出していて、小売もやっている」といったような認識になってしまった。

◯なぜ隔月刊行にしたのか
東日本大震災があって、そういったものを伝えるフットワークの軽さが重要ではないかと考えたため。本当は月刊化したかった。しかし、あまりにも資金繰りと編集作業の両立がたいへんで、なおかつ内容はフットワークの軽さとはあまり関係のない方面へずれていったので、季刊化させた。季刊化させると発行がずるずると遅れ、ミニコミにありがちな遅滞・停滞が発生する気がしたが、いまのところはあまりそうはなっていない。

◯当初のイメージ
ラジオのような、という話があったが、テレビのようにつくろうと思った。雑誌体験が薄く、活字の雑誌で定期購読していたのは『コロコロコミック』くらいしかない(活字ではないが)。主に古今のバラエティ番組の構成のしかたを見て、それを生かそうとした。おそらくあまり生かせていないと思うが、ものごとや話の分解のさせかたはすごく参考になった。

◯創刊号について
初のオフセット印刷であった。最初の印刷屋さんとははじめての取引だったというのに後払いにしてくれた。大いに助かった。 オンデマンド印刷では、版下にCMYKデータがあってもグレーで刷ってくれていたが、ぜんぶグレースケールに変換せねばならず、その濃度を読み違えて林さやかさんの顔が真っ黒にあがってしまい、平身低頭した。

◯表紙に夕タンさんの起用
模索舎で「戦中よっち」を手にして、一目惚れしたため。お会いしたこともないのにメールして、描いてもらうことになった。

◯表紙の工夫
表紙の色味は、Kを基調とし、C版M版Y版とわけていった。創刊号がY、2号がC、3号がMである。5号はK一色だ。これで刷版数が減り、経費も浮くと考えたのだった。

◯連載について
宇田さんや左岸さん、赤いドリルさん、Zさん、鳩野さんら、主にお会いしたことのある方にお願いした。連載はなかなか難しく、途中の号からはじめたものもある。

◯切貼豆子について
創刊時から流通や企画面を含めよく相談して、いまでも話をすごくし、すごく話をする。話すうち、途中で吸盤の話や、電球の切り替えについて、家に導入するアウトドアグッズの相談などもされ、そこをじっくりと聞き、その後あらためて雑誌の話をする。切貼は独自の判断基準を持っていて、見る目があり、ズレがない。私はそこがなく油断しがちなので、とてもありがたい。切貼がいたからこそできたことは多くあって、よく考えればほとんどそうだともいえる。

◯慣れないやりとり
メールでのやり取りは随分と長い間辛い作業で、時間をかけて文面を推敲して送っていた。最近では編集を切貼や知り合いの方たちと分担するようになり、負担も少なくなった。

◯最初の古本特集
一部だが、3号(=本縛り)である。東京に来て、古本屋さんの仕事というものをはじめて見たのだが、しかし売るだけなら誰でもできるし、買うのも古物商があれば人から、なくても本屋さんでせどりができる。そうすると、古本屋さんの仕事というものは何か、と考え、「縛り」だと結論づけた。この考えはいまでもあまり変わっておらず、運搬・物流こそが本の小売の仕事のいちばんの本質であり、この考えは18号の「車」特集につながってゆく。

◯最初の本以外の特集
5号の名画座特集である。上京時よりたいへんお世話になっているのむみちさんが、かんぺを出されて頑張っておられることへフォーカスをあわせたい気持ちが最初にあって、そこから膨らんでいった。本関係の雑誌が、本のことだけを取り上げなければならないという決まりはなく、それは偏見である。そもそも、本を読む人や本に関わっている人が本だけ読んでいるかというとそうではなく、本を買いに行って電車にも乗るし、石臼をまわして粉をひくこともあるわけで、電車特集でも石臼特集でも構わないのだ。

◯局所的ジャンルの特集
上記の流れでいえば、本は小説や人文・カルチャーがすべてではなく、料理本や理工、PC、ビジネス、自己啓発なんかもあれば、医学・学習参考書などもある。どれもインクがついた紙を束ねて背をホットメルトで固めたりしている物体で、物理的にはあまり変わりがないというのに、触れないジャンルというものは存在する。そういう部分が本の面白く広がりのあるところのひとつなので、とりあげた。

◯責任編集
字面だけではなく、ほんとうに編集していただいた。8号(日記=切貼豆子)、11号&14号(片岡義男/名画座=朝倉さん)。密に打ち合わせをするため、朝倉さんと豆ちゃん以外にやってもらうことは考えられない。朝倉さんとの出会いは、往来座でのこと。連載をしていただこうとお願いし、ご快諾いただいた。そのうち、特集企画を相談するうち、逆に持ち込まれたのである。こう考えると往来座の存在はかなり大きいものがある。 朝倉さんの編集号は、それまでの読者層とはまた別の方にアプローチするところがあり、とても評判がよかった。

◯持ち込み企画
全体の特集ではなく、一部の持ち込み企画もあった。9号では、地下の古書市で行われたトークを、17号では赤いドリルさんの企画と千代田図書館トークを持ち込まれ、収録した。

◯直接納品の廃止、送付への切り替え
当初は配送料がもったいなく、基本的に直接納品をしていたが、カートを引いて都内をまわるのは骨が折れ、店の人に話かけるのも緊張するわで、大変だった。そのため、近隣でもすべて郵送に切り替えさせていただいて、近所の郵便局に異様な量の郵便物を持っていくようになった。そこで郵便局に目をつけられ、特約契約へとつながった。

◯身体についてとりあげる
10号では腰痛特集をおこなった。これはとても重要な事で、本は重いのである。3号・18号もそうだが、運搬は本のすべてである。

◯紙を変え、判型を切り替える
9号で、表紙を『SUMUS』と同じような紙にしてもらった。運搬時に印刷がスレなくなり、ダメージ本の発生率が大幅に低下、ストレスから解放された。しかし、紙の価格の関係で、13号から現在の判型切り替えた際に、マーマーマガジンのような紙にした。これはよい紙で、印刷がはえるものだ。本文用紙もわら半紙のようなものに変えたが、しだいにヤケやすいことがわかり、コストダウンの意図もあって19号では上質紙に戻した。

◯取次への接触
取次の八木書店さんとは、バーゲンの取引のため最初契約した。11号は朝倉さんの編集で、そうとう気合を入れられているのを感じ、これは本気で売らなければと思い、本の取次の相談した。現在は当初と担当の方が変わったが、その担当の方を筆頭にずぶの素人に近い質問も答えてくださり、ほんとうに大変よくしてくださっている。ありがたい。

◯印刷所の変更
11号からニッケイ印刷さんへ変更した。知り合いの方からの紹介で、実際に安く仕事も丁寧だった。 茶色の包で納品されるのだが、こんなに四角くなるのかと思うほどキッチリ包装してくださるのである。途中で切り替えた印刷所さんには申し訳ない気がする。

◯対談と座談会
ある方のブログで、ある雑誌(BOOK5ではない)のバックナンバーを読んだ感想として、 「対談記事はこれくらいのものがちょうどよい」という記述をみつけた。雑誌スタート時は、座談会や対談など、なるべく長めで、その人の人柄が出したいというような考えがあった。構成もこねくりまわして、精緻に読めばその人の言わんとしているところにグッと踏み込めるようにしようと思っていた。だが、年を経るにつれて、人には生活があり、自分の人生があるということがわかり、雑誌の記事を読む時間というのは、その合間に入ってゆくようなところがあるのだと気づいて、それまでよりは簡素な内容をこころがけた。私はすべてを知りたいと願うところがあるが、しかしすべてを知りたいと願う人はわずかで、それであればその手だてのポイントが残っていればそれでいいと気づいたのである。ただ、それが正しい判断なのかはよくわからない。

◯サッカー特集
15号はサッカー特集で、これは14号の名画座特集での朝倉さんの頑張りに奮発された私の特集である。 サッカーはスポーツとしての面白さはもとより、地域との関わりや、育成システム、広がりなど、構造的には本の世界とも親しい物があると感じての企画でもあった(だがそのことを書かなかったので誰にも気づかれなかった)。人生でいちどお話がしてみたいと思っていたマンガ家さんがふたりいて、そのうちのひとりである能田先生とお会いでき、とても嬉しかった。生ける伝説・澤が引退して、女子サッカーがどうなっていくのか。いつかなでしこ特集をしたい。

◯16号と17号
16号はしのそのへの立松カナコさんが15号のフットサル取材後におっしゃっていたことを、ほんとうに企画として実現した。17号はとにかく大変で、じぶんの仕事の出来なさに情けなく、申し訳なくなったが、出来てそのページ数の多いことに驚いた。

◯バーコードの付与
 吉上さんの本を出すことになり、バーコードを付与した。ちなみに18号が00である(吉上さんの本が01)。それと同時期に、事務能力のなさから管理しきれず把握できなくなりつつあった直販委託をほぼなくしてゆき、取次経由へとスライドさせていった。

◯18号 車
 本の本質である移動の手段にフォーカスした特集である。自分自身が、「BOOK5」を出す代金を捻出するために買取を増加させるべく奮闘し、増えてきてレンタカーでは対応できなくなってきたという実用的な面もあった。業者ではない方には変わった特集としてとらえられたような気がするが、古本屋さんには予想を遥かに越える好評価で、びっくりした。内堀さんが「図書新聞」で取り上げてくださって嬉しかった。

◯19号
 アンケートはやりたかったことのひとつで、何よりテープ起こしがないのがいいと考えていたが、漏れのないように70名以上の方とやりとりするのはテープ起こしと同じくらい神経を使う作業だった。「1」「2」などを所定のフォーマットに落とし込まず、引っ掛かりをつくれればと思って、回答していただいた方の作成したフォーマットをそのままつかってやや読みづらくした。東京堂書店の週間ランキングで2位になったことはほんとうに嬉しく、このミスやおすすめ文庫王国のようなこれまで読んできた歴史のあるものを抑えての順位だったことも感慨深かった。

◯20号
 今度出そうと考えている号であり、どういう内容になるかはわからない。